第35話
ビターに続いて、ビーンも恭しく礼をした後すぐに部屋を出て行く。その表情にはなんの色も宿っておらず、なにを考えているのかは分からなかったが、同時に不審や疑いの色も見られなかった。
「申し訳ないのだけれど、これから少し用事があるの。このお菓子は宮中の侍女たちで食べてしまってくれるかしら。」
「かしこまりました。」
相好崩れることなくそう返した侍女であるが、内心ガッツポーズしているのがミルには分かっていた。
小町の評判はすこぶる良い。病気ではあるが陛下の寵愛を受け、ひたすら部屋にこもる深淵の美少女。本人が聞いたら憮然としそうであるが、侍女たちの小町のイメージはそうであった。
ところで、なぜそこで小町が憮然とするのかというと、今の自分の状況が本人にとって不本意であるからである。
自分が后妃として選ばれないよう、小町は重病であることを世間的にアピールしなければならない。やることはたくさんある。この国では后妃候補から落とされた女性は側室にならなければ后妃付きの侍女として、一生を宮中で過ごさなければならないからである。
小町は后妃になりたくないのはもちろん、ビターの目の届く範囲内にすらいたくない。しかしそれを逃れるには、いくつもの障害をクリアーしなければならないのだ。
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