第31話

今まさに、小町でも分からないことが起こっているのだ。



前々世では、小町の成人後すぐ、彼女は后妃になった。それからしばらくして小町はシュガーとビターの関係を知り、あの忌まわしい事件が起こり、絶命したのである。




それなのに、もう小町が成人して半年が経つ。目の前でなにやら話しているこの皇帝はいまだ自分の妻を指名する気配すら見せない。



「で、あるのだ。分かるか?小町。」


「はい。陛下の聡明さにわたくし、驚いているところですわ。」


「……誉めてもなにもできぬぞ。」




機嫌よく笑うビター。かつて小町が愛して、裏切られた男だ。




小町の調べでは、ビターとシュガーの関係は今も続いているようだ。極秘にではあるが、ビターがシュガーの寝室へ渡った、という情報が耳に入ってきている。




だからこそ小町はシュガーをこの城へいれることを画策した。そして自分は重度の喘息を患っており、長い時間療養地へ行かなければならないほどであるということを周りに印象付けた。



成人後、ビターのわがままで療養地へ戻れなくなってしまったが、小町はもうアピールは十分であると思っていた。




ビターの妻となるということは、この国の母になるということ。そしてビターの子を生むことは、世襲制であるこの国で最も重要な仕事であるといっていい。

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