第29話

しかし小町は、その完璧の上をいく女性なのだ。




集めたデータを適材適所で発揮し、なおかつそれ以上のもてなしをできる。



洗礼された所作、好ましい雰囲気。小町が笑うとビターだけでなく、この部屋すべての者が和む。




自分を見つめるその目は幼少の頃から変わらず、まっすぐだ。



それが無礼であると言いたいわけではない。小町のその目は、王太子であった自分でも、皇帝である自分を見つめているわけはない。



小町は自分を、ビター・ドロップ、一人の男として見ている。



それは、この世界では特異なことである。この世界でコーヒー王国の皇帝とは人の頂点と言っても過言ではなく、それはこれからも変わることのないであろう事実である。



実質、コーヒー王国ほど富んでいる国はあまりない。この世界には亜人たちの住む国以外はすべて人間が統治しており、その筆頭がコーヒー王国であるからだ。



それだけ、ビターという皇帝は唯一無二。代えのきかぬ、最高権力者なのである。


そんな皇帝をただ一人の人間として見ることは、この国の、それも貴族に属する人間ならばあり得ないこと。



しかし小町は、その壁を悠々と越えてみせる。それだけ非凡で特異な女性なのだ。

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