第27話

それが皇帝であるが故に贅沢な悩みであることは重々承知している。しかし願うくらいはよいのではないか、ビターは自分が唯一無二の存在であることで受けなければならない理不尽に日頃から反抗心を抱いていた。




そんなビターの心情をおもんばかっているかのように、この小町はなにかと自分の心を揺さぶる。




「どうぞ。」


「ああ。すまない。」




この、ティータイムもそうだ。



小町はさりげなく、自分の好みの紅茶を用意している。事前にビターが来ることを知らせようが知らせまいが、である。それはひとえに、いつも自分が来ることを想定していることに他ならない。



「……ふむ。うまい。」


「うれしゅうございます。」



ビターは紅茶を一口含んで、思わずそう言っていた。ビターの言葉に小町は嬉しそうに頬を染める。




実際は、というと。




(こいつ、いつ帰るんだろ?)



とイラつきで頬が紅潮しているに過ぎないのだが。




可愛い?小町の表情に満足そうに頷いたビターは、そっと目の前に広がる、色とりどりの菓子たちに視線を滑らせた。



その一周だけで、小町は当たり前のように片手を上げる。



それに当たり前のように一歩前に出た侍女が渡した取り皿を受け取り、ゆっくりと大皿からクッキーを取り分けた。

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