第24話

そもそも、厳格な性格であるが故、彼が笑うことも珍しく、かなりのレアケースであることも影響している。




しかしこの小町にかかればそれはそれほど難しいものでもない。



なにせ小町は、この世界の頂点に立つコーヒー王国皇帝、ビターからの寵愛を一心に受けているのだから。




「公務の合間に時間があったのでな。あまり部屋にこもっていても退屈であろうと思い、お前の好きな菓子を持参したわけだ。」




どうだ、嬉しいだろう?とばかりにふんぞり返る皇帝は、自分がまさか得意げな顔で子供のように目をキラキラさせているとは気付いていない。



子供の頃から、ビターはそういう所に鈍いところがあった。



言ってみればビターは、分かりにくい男である。




生まれた頃から次期皇帝になることが決まっていた彼は、何不自由ない生活をしてきたと同時に、その立場であることで被る不自由も経験していた。



例えば目の前にケーキがあるとする。ビターはその名に反して意外と甘党であり、もちろん大好きなケーキが目の前にあれば嬉しそうに万歳して食らいつきたかったであろう。




しかし時期皇帝はそうではない。




ケーキを前に喜びの表情を浮かべることはできない。極端に言えばケーキで釣り、命を狙われる危険もあるのだから。

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