第22話
「はい。」
「私だ。」
質問をする前に、この部屋への2人目の訪問者が訪れてしまったからである。
その声の主は、明白。小町とミルは目を合わせて、同時に嫌そうな顔をした。
声の主は、入ってもよろしいか、などと丁寧に尋ねるような人間ではない。それが分かっているだけに、ミルは素早く小町の後ろに控え、小町はだらけきって座っていた態勢を整えた。
すぐに開かれた扉。そこに立っていたのは小町とミルの確信の通り、ビター・ドリップ、その人だった。
プラチナブロンドのその髪は、整髪料やシャンプーなどがまだ開発されていないこの時代でも、キラキラと輝いている。綺麗に切りそろえられたその髪に通した指は、時代に合って武骨であった。
鍛え抜かれたその肢体を包む服はこの世界で最も高価であろうことは一目瞭然。金色の糸で施されたそのデザインは、まさしく王が着るのにふさわしい代物だ。
「菓子を、食うか?」
手を上げたビターの背後から、その言葉が合図であったかのように宮廷お抱えのコックたちが現れる。同時に給仕係の侍女たちは、一切無駄のない動きで小町を取り囲んだ。
彼女たちの手には、この世のありとあらゆる甘味が乗った皿が。
「小町様、マカロンはいかがですか?」
「こちらはクッキーになります。いかがでしょうか?」
伺いをたてるその笑顔は、距離が近いせいかなかなかの威圧感を発揮している。
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