第19話

「クックックックックッ。」


「笑い声がもはや魔王なんだけど。」





小町の冷めた視線を受けながらも、ミルは"爆笑"をやめない。




「クハハハハ、素晴らしい茶番劇であったぞ。我を楽しませるとは貴様、やるな!」


「だから。魔王出てる魔王!」


「何を言う。この世界に魔物や亜人はいても、魔王などというバカげた者は作り出していない。」



「そうなの?それは今知ったわー。」




ふんぞり返るミルを前にする小町には、もはや先ほどのバイセンの前での彼女はいない。これが、本来の小町、とも言い切れない。



なんせ、彼女の中には現在、3人の小町がいるようなものだ。




一人目は、この世界。成人し、ビターの妻となり、裏切られ、彼の目の前で火刑に処された純粋な自分。



二人目は、そんな小町に同情したのかどうかは分からないが、神の好意により別の世界に転生した自分。そこではそれなりに普通な生活を送っていたのだが、人が人生を生きるということは中々大変なものだ。



それでも小町は二番目の人生を気に入っていた。しかしそれは、この三人目の自分へと繋がってしまう。




「それはそうだろう。魔王の宿敵は神と決まっている。我を滅ぼそうとする輩などなぜ好き好んで作らねばならん?」



「要するに、ヘタレた、と、そういうわけね。」



それを無理矢理実現したのは、このヘタレ神こと、ミルなのだが。

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