第18話
「でもごめんなさい、バイセン。もう少しだけ、身体を休ませてほしいの。」
「っっ。申し訳ございません。出過ぎたことを。」
小町の憂いを帯びた表情に、バイセンは今にも泣き出しそうな表情になり、頭を下げた。
それはそうだろう。自分の敬愛する主人が苦しんでいるというのに、行きたくもないお茶会に、家名のために行けと自分は言っているのだ。
しかし小町は、大丈夫とばかりに首を横に振る。その表情はただの侍女である自分を気遣っているように見え、バイセンの目が潤んだ。
「いいのよ。バイセンの立場上、仕方のないことだもの。誰よりも嫌な仕事をさせてしまい、こちらこそ申し訳ないわ。」
「そ、そんなっ、もったいないお言葉!」
「ううん。バイセン、いつもありがとう。」
「……小町様。」
バイセンの目が、さきほどの3倍は潤んでいる。目の端から今にも零れ落ちそうな雫はバイセンの感動の大きさを多分に表現していた。
そこへ、この茶番劇を何を思って見ていたのか、笑顔のミルが一歩前へ進み出た。
「小町様、そろそろお薬のお時間です。」
「ああ、そう?分かったわ。バイセン。」
「は!」
もはや零れ落ちてしまった涙を拭いながら、バイセンが深々と頭を下げ、部屋を出て行く。
部屋に残ったのは静寂。それを破ったのはミルの低い笑い声だった。
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