第17話

「お体がお辛いのは分かりますが、さすがに他のご令嬢方のお茶会に参加なさらない、というのは、いささか体裁が悪うございます。」



「……ええ、確かにそうね。」




確かに、小町の口からは肯定の言葉が零れた。しかしそれはそれまで。そうは思ってはいても、承知した、ということではない。



実は、小町もそろそろマズイとは思っていた。后妃の候補同士でライバルであるとはいえ、自分宛に届いたお茶会の誘いを、それも同じ城に住んでいながら断るのは、さすがに立場的にはよくないことだったからだ。



しかし、一応の口実はあった。



小町は今だ"持病"である喘息に苦しんでいる真っ最中。本来ならば成人の儀を終えてすぐ、再び療養所に戻るつもりであったのに、ビターの一存でそれを阻止されてしまった。



病気を治すための場所に戻ろうとする小町を自分が一緒にいたい、という理由で引き止める皇帝。



なんとも自分勝手であまりにも無神経な行為であるというのに、ビターの周りはそれを、小町と離れたくないがための素敵な恋心のせいにした。




小町は内心、こう叫んでやりたいものだった。




『絵本みたいな世界で生きたいなら勝手にやってろ!私はごめんだ!』と。




しかし、小町と共にいたいと駄々をこねる皇帝を前に、「お前は馬鹿か?」と鼻で笑うわけにもいかず、小町はただただ流れにそのまま流されるしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る