第16話

(忘れはしない。あの時の小町様の寂しそうな笑顔を。)




お茶会の誘いは、小町が将来の后妃と見込んでの貴族たちの取り入りが8割。しかしその誘いの量も、小町1人だけがこの城にいたころに比べれば雲泥の差がある。



つまり招待の数が、恐ろしく減ったのである。



貴族というものは身勝手なもので、こちらに分があればこちらに、あちらに分があればあちらへと、まるで風見鶏のように変心するもの。



そしてそれは、他の后妃候補たちへと向いているのだ。



バイセンとしては、いまだ皇帝の寵愛を一心に受けているのは自分の主人であると自負していた。



なんせ成人の儀を終わらせた小町を、再び療養所に帰すことを、ビター国王は良しとしなかったのだ。




『我の傍にいてくれ。』




他の后妃候補も大臣たちもいるなか、憚らずそう言ったビター国王の言葉。もはやバイセンは疑うこともしない。




しかし小町はというと、そんなビター国王に対して馬車を降りた時と同じような、寂しそうな笑顔を返すだけ。




もしや我が主人は后妃候補たちのことを憂いているのでは?バイセンはそう思っていた。




実際は、というと。




(そこにいるシュガーとそういう関係なくせに何言ってやがるこつ。)



と、軽蔑の表情を必死に押し込めていただけに過ぎない。

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