第15話

「申し訳ございません。わたくしもあまり、おすすめしたくはないのですが。」


「……いいのよ、バイセン。」




バイセンへの気遣いからか、小町が困ったように笑う。そう、あの日の笑顔そっくりに。



バイセンは歯噛みした。




あの日、自分の最も慕う主人を迎えたのは、シュガーを初めとする新しい后妃候補たちとそれを後ろに侍らせるビター国王だったのだ。



小町は、彼女たちを見て驚くこともしなかった。自分とは違って、だ。



ということはつまり、小町は自分とは別に信頼を置く者に、城での出来事を探らせていたということ。そしてそれが今、彼女の斜め後ろで我が物顔で立っているあの女であることも理解していた。




といっても、それには少々誤解がある。




現実はバイセンが思いつきもしない人外な力によってことが運んでいたからだ。




つまり小町は、ビターの妻にはなりたくはない。当たり前だろう。前々世で彼女は、手ひどい裏切りに遭い誰よりも愛していたビター、その人によってその身を焼かれ絶命したのだから。



その為に小町は、この世界の神であるミルの力を使い、少しでも自分が后妃の座から遠ざかるため、策を労した。




その一つが、今やもう1人しかいない后妃候補の増員と、その中にシュガーを加わらせることだったのだ。

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