第14話

「そろそろ、小町様にも受けていただかなければなりません。お茶会のご招待がそれはもう、山ほどきておりますので。」




バイセンの言葉に、小町の笑顔が初めて崩れる。その表情はまるで苦虫を噛み潰したかのようで、その招待が小町にとってよろしくないものであることは一目瞭然だ。



主人の表情に、バイセンは内心苦笑いを零していた。



その顔に出てしまう素直なところは昔のままだな、と。




最近の、特に城に帰ってからの小町からは、人間みのある表情がまるで抜け落ちてしまったかのように感じていた。




小町は喘息の持病がある程度落ち着き、療養の地から成人を迎えるため、この城へ戻ってきた。



后妃候補の成人なのだ。もちろん、療養の地で成人の儀を受けさせるわけにはいかないのだから当然のことである。



しかし、城へ戻った小町への陛下の所業は……。




小町を慕い、人生を賭して温度家に勤めているバイセンには到底受け入れられないことだった。




バイセンは馬車を降りた時の小町の表情を今でも覚えている。




この国は、陛下はあろうことか、たった一人だった后妃候補である小町に不安を抱いたのか、他の后妃候補を用意していたのだ。




療養所にいたバイセンは、城での出来事を探っていた。にも関わらず、あの日馬車の前、馬車を降りた瞬間死ぬほど驚き、すべての情報が耳に入っていなかった己の未熟さを恨んだ。

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