第12話
「ところでバイセン。何か用があってここに来たのではないの?」
「え?あ、もうしわけございません。そうでありました。」
頭を深々と下げたバイセンを前に、優雅に座る小町は目を細めて首を横に振った。
それがバイセンに見えているわけではないが、バイセンの主人である小町が、そこまで心を砕きアピールする必要などない。
なにせこの世界では、貴族と平民、そしてそれよりも下の人間たち、そして獣と人の間に位置する
そして、魔物と呼ばれる人ならざる奴らなどは、もはや市民権などあるはずもなく、すべてが討伐対象である。
この世界では、人こそが至上の生物。
もちろん小町は皇帝を除けば最上級に位置する貴族の娘であり、平民出身のバイセンにとってはまさに雲の上の人、なのである。
しかし。バイセンは急に顔を上げると、自分をまっすぐに見る小町を見つめ返した。
その顔は笑顔であるのに、目は笑っていない。その迫力に気圧された小町の鉄壁の微笑みが、初めて崩れた。
小町は悟ったのだ。
『これは、説教だ。』と。
貴族の娘が、平民出の侍女を恐れたのだ。
故に、小町はとっさの機転を利かせた。
瞬時に、ミルを売ることにしたのである。
「ミル。あなた、使用人の定例会議、いい加減出たらどうかしら。」
「……ん?」
聞き間違いか?とばかりにミルが思わず素を見せる。振り返った小町は、素が出てるよ!と目で訴えかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます