第8話
小町は普段、神であるミルが出した異世界の菓子を主に食べている。それも、この世界よりも数段美味しいそのお菓子たちを前世も合間って食べなれている小町にとって、ティータイムで出てくる色とりどりの原色菓子に嫌気がさしていたのだ。
本音を言えば、美味しくないものは食べたくない。それに太るし。ということ。結局は一言で片付けられないほど、彼女にとって体型の維持は重大事項なのである。
先ほどまでテーブルの上に散らばっていたはずの異世界の菓子はなく、床にまで落ちていたクズすら見当たらない。それに、部屋中に漂っていたその甘美な香りさえ皆無だった。
「ミル様、定例会にはお出にならないのですか?」
「ああ。私は小町様のお側にいる。」
「……承知いたしました。」
紅茶を飲む小町の傍、綺麗な姿勢で立つメイド服のミルは、不満顔のバイセンへ小さく微笑むとそれを完全に無視し、小町に口を開いた。
「小町様、お紅茶のおかわりはいかがですか?」
「いえ、ミル、もう結構よ。」
「かしこまりました。」
何気ない会話。しかしこの2人の間には主従とはいえ、密度の濃い信頼関係が見てとれる。
そんな2人の様子を見て、バイセンは歯噛みした。
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