第3話
幼馴染である彼女の人柄、両親の聡明さ、そして何より、彼女の持つ雰囲気を、ビターは大変気に入っていたからである。
彼女こそまさしく、将来自分を支える后妃にふさわしい女だ。
彼女と知り合ってその人となりを見て、ビターは内心そう思っていた。
后妃候補が次々に死んでいったことも、ビターには大したことではなかった。
皇室の、それも頂点に君臨する皇帝である自分の妻の座。それは文字通り、国中の女の頂点に立つことを意味する。
その場所を欲しがる者は少なくはなく、その椅子に近づけば近づくほど、危険度は増すことだろう。
故にビターは思っていた。
温度小町のみが生き残っているのは、ひとえに彼女の聡明さと、危機回避能力が非凡であるが故であろう、と。
この時のビターは、確実に温度小町を将来の妻として見ていた。彼女の笑顔を思い出せば自然と頬が緩んだし、彼女が暗い顔をすれば笑わせてやりたいと思う。
当たり前のことだが、皇帝であるとしても彼も人間。可愛く、従順である美しい姫を前にすれば恋心を抱くのも当然のことである。
もちろん、彼女は自分の将来の妻であり、このまま時が経ち彼女が成人すれば名実ともに彼女は自分のもの。
今はほんの少しだけ心を揺るがされるだけの甘酸っぱい気持ちも、共に時を刻む内それは、洪水のような激しさへと進化しそれはやがて穏やかな小川のせせらぎのような愛へと変わるだろう。
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