第48話

「美音ちゃんはいつも私と一緒で!どこに行くのも一緒なの。私は、美音ちゃんが一緒じゃなきゃ嫌!」



叫ぶようなその言葉に、周りのテーブルから驚きの視線が集まってくる。さっきまで一花を囲んでいたオーディエンスだった人たちもついていた席から心配そうな視線を向けてきていた。



「一花、落ち着いて、ね?」


焦った様子の健介が一花の背中を撫でて座るように促している。綾瀬さん以外の3人の女の子たちもまるで一花を腫れ物に触るかのようになだめようと必死だ。対して綾瀬さんは、なぜか私を射殺さんばかりに睨みつけてくる。まるで一花がこうなったのは私のせいと言わんばかりだ。



どうやら涙まで出てきたらしい一花は鼻声で、まるで舞台女優のように身振り手振りを加えながら話し出した。それは観衆に訴えかけるかのよう。



「だって、私の大切な美音ちゃんとみんなも仲良くなってほしいの!美音ちゃんは美人だし、優しいし、頭も良いし、きっとみんなとも仲良くなれると思うの。私の大好きな人たちがみんな一緒にいれたら嬉しいなって。」


「一花。」


ほう、とため息交じりに名前を呼ぶのは健介だ。トロンとした目は恋する乙女って感じで一花の言葉に感動している様子。


「…ごめん、一花。言い過ぎた。」



そして、罰が悪そうな顔でなぜか一花に謝っている綾瀬さんも笑顔を返されるとやや嬉しそうにプイと顔を背けている。どうやら一花の大好きな人たちというワードに感動した様子。そして、他3人も口々に私は大丈夫だよ、とか、一人くらいいいんじゃない?とか、私が参加する感じで話が進んでいる。


え、コワイ。なにこの雰囲気。涙目の一花に、まるで魔法がかかったかのようにみんながくぎ付けだ。



そして。



「それに、誘ってあげないと美音ちゃんが可哀そう、だよ。」


「っっ。」




最後、涙目の一花によって吐かれたセリフに、まるで冷水を浴びせられたかのように自分の感情が冷たく沈むのを感じた。

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