第46話

「あ、私もトレー。」


「ん?」


「派、なんだけど、まぁいいよ、うん。」


「そう?」


「…うん。」




律の機嫌は最低ラインを突き破っている。これは触れない方がよさそうである。



「それで、話って?」


「うぇ?ああ、うん。」



私には生返事でチラチラと律を見てる一花。だけど律はどこ吹く風でうどんを食べだした。



ズゾゾゾゾゾ。恐ろしい音が響き渡る。



「で?」



律を気にしててもしょうがない。それに昼休みは1時間しかない。スマホを見れば、もう20分は過ぎてるわけだから早く私も食べないと。手を合わせて箸を持ちながら視線で続きを促せば、一花は目を泳がせながらも口を開いた。



「あのね、夏休みなんだけど、みんなで泊りがけで遊びに行こうってなってて。」


「ふーん。いいんじゃないの?特進繋がりなら休みも合うだろうし。」



夏休みは勉強が忙しく、特進の子の休みはほぼあってないようなもの。泊りがけが何泊予定か知らないけど、特進同士の友達なら休みが一緒だから予定を合わせやすい。何気なくそう言ったところで、うどんを噛むのを忘れてゴクリと飲み込んだ。



特進の友達で行くならわざわざ私を呼び出したりはしない、よね。恐る恐る顔を上げれば、キラキラした笑顔とかち合った。



「なら、美音ちゃんも賛成ってことだね!」



どうやら、その予定メンバーに私も勝手に入れられているようです。

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