第39話

ああ、また息ができない。



耳元で聞こえ続ける雨音に邪魔されて、一花とお母さんが何を話しているのかさえ分からない。



だけどなんだろう。すごく嫌いな音、なのに。



2人の会話が聞こえないのなら、それもいいか、なんて思ってしまった。





ーーー、




「美音ちゃん?」



名前を呼ばれて顔を向ければ、眉をハの字にした一花が、私を見つめていた。



「どうした?」



ぼーっとしてたらしい。辛うじて出た声は少しかすれている。



「聞いてなかったの?だから、昼休み、一緒にご飯食べない?って聞いたの!」



ぷっくりと頬を膨らませる一花の誘いに首を傾げる。



高校に入ってから、私と一花は意外にもお昼を一緒に食べたことがほとんどない。数えても多分1、2度くらいだと思う。



入学する前は一緒に食べようねって言われてたけど、結局は一花が新しくできた友達とか健介と食べるからって謝られてばかりだった。



そのまま自然な流れでお互い一緒に食べなくなって。いや、始めから一緒に食べてはいないんだけど。

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