第37話

ああ、息ができない。



厄介な感情だ。



なんでも持っている一花。


”持たない方が良い”ものを持っていない一花。




彼女はまるで、物語の主人公のようだ。




完璧な容姿、明るい性格、持って生まれた頭の良さ。



社交性に優れ友人が多く、かっこいい彼氏がいて。



ご両親を突然失った彼女は、周りに同情され、包み込むような優しさをもらっている。


華々しい人生を歩む彼女をまるで試練に陥れるかのような不幸は、彼女のひた向きさを露呈させ、庇護欲を誘った。




小説によくある、困難でも幸せな人生を歩むヒロイン。一花はそのポジションにぴったりな場所にいる。



そんな私はさながら、彼女に【嫉妬】する、悪役といったところか。



実際に、私はしている。



一花に【嫉妬】を。

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