第36話
家に帰りつくまで時間で言えば20分足らず。だけど最近、この時間が苦痛でしかない。
卑屈で嫌な考えしか浮かばない私は、ただただ今の状況にイラついている。
確かに、一花には少々難がある。だけど、それだけで付き合いをやめるほどの浅い関係でもない。
それなのに私は、段々我慢できなくなっている。
ご両親を一度に失くして目を腫らせて泣き崩れていた一花が笑っているのに、気に入らない。
それは、なぜだろう?
答えは分かっている。
見上げた空は真っ暗で、吸い込まれるような漆黒の闇からは雨粒は落ちてこない。
それなのに、ゆっくり、ゆっくりと息ができなくなってきた。
シトシトと降る雨。纏わりついてくるのが鬱陶しくて、水滴を拭っても拭ってもそれはなくならない。
まるで雪のように”降り積もる”それは、私の口を、鼻を、覆いつくそうとする。
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