第29話

そして彼は私と同じ進学コース。トップクラスではないにしろ、成績も良いのだから、女子の人気はもうものすごい。



…そんな私も、その内の1人だったんだけど。



親の繋がりのお陰か、それなりに仲の良かった私たち。王子さまみたいな健介のことが、私は初めて会った時からずっと大好きだった。


『こんなこと頼むの、申し訳ないんだけど、紹介して欲しい子がいるんだ。』



そんな恋心も、口に出すことはできなかったんだけど、ね。



だから今でも、健介を見ると胸が苦しい。激しい恋じゃなかったのかもしれないけど、このまま彼と一緒にいれたらと思っていたから。


なのになんでだろう。自分でも自然と笑えているのが分かる。


好きな人を目の前にすると、何もかもが吹き飛んでしまうものなんだな、なんて、律に言ったらまたデコピンされそうなことを考えた。



「どうしたの?」


「いや、ちょっと一言、お礼を言いたくて。」




なんだか照れ臭そうにしている健介。嫌な予感しかしない。そのせいで今の私の頬は盛大にひきつっているかもしれない。

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