第22話
「美音?」
「っっ。」
名前を呼ばれてようやく、息ができた。そこで初めて自分が息をしていなかったことを自覚して、相手に悟られないように、少しずつ、少しずつ、呼吸を繰り返す。
「大丈夫?」
「あ、うん。」
心配そうに見てくるその人の骨ばった手が私の額に触れて、体温の低さに心地よさを覚え、目を閉じた。
「熱はないね。」
「ふふ、当たり前でしょ。」
目を閉じたまま笑えば、目の前の彼も笑ったのが分かる。
「なんか最近、しんどそうだね。」
心配する声に目を開ければ、相変わらず、子犬のような、あざとい表情が飛び込んできた。
少し色素の薄い黒髪を爽やかに短く切り揃えた彼は、まるで子犬を前にしているかのように可愛らしい見た目をしている。
真ん丸の目は茶色でタレ目、鼻筋が通っていてしゅっとした輪郭という、目とのアンバランスさが、まるでダックスフンドのようで女の子に人気だ。身長は172センチらしい。本人はもう少し欲しいらしく、頻繁に保健室に通って身長を図っては私に愚痴ってくるから、妙に詳しくなってしまった。
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