第20話

階下で、一花のはしゃぐ声とそれに答えるお母さんの声が聞こえる。



それを聞いて私の正解はきっと、一緒になって嬉しがることなんだろう。



それなのに、なんで。




「私って、薄情なんだな。」




最低なことに私は、たった3年くらいだとしても、”私の中”に一花が入るのを、嫌だと思ってしまった。




もちろん、想定の範囲内のことだ。ご両親を一度に失って、どうやら引き取ってくれる親戚もいない一花。それを証明するように、ご両親の葬式はうちの両親が執り行ったから。




葬式当日、喪主の位置に座る一花に親身になって話しかけていたのはおじさんの会社の同僚やおばさんの職場の人たちばかり。



どう考えても親戚らしき人は見かけていなかったし、お父さんがおじさんたちが亡くなったことを知らせていたにもかかわらず香典すら送ってこなかったのだから、そういうことなんだろう。



だから、成人するまでの間とはいえ、一花を引き取ると名乗り出る人なんているわけもなく。



だから、うちの両親の性格上、後見人という形でなんらかの世話を焼くことは予想できた。




だけどまさか、うちに住まわせるなんて。



もちろん、親友という立場なら、一緒に暮らせることを喜ぶべきだと思う。それなのになぜか、私は喜べない。



”嫌な予感”が当たったと、一花を受け入れることをそう思う時点で、どうやら私は最低な人間なのだと認識させられてしまった。

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