第9話

コンコン…。



「…はい。」



突然のノック音に扉の真ん前で体がビクリと反応した。それでもなんとか冷静を保って返事をする。



『美音ちゃん?一花。』



扉越しの声に思わず身構える。長年付き合ってきたからか、今の彼女が浮かべている表情すら予想できている自分が嫌で、思わず苦笑いがこぼれた。



「どうぞ。」



思っていたよりも低い声が出た。そしてその声に怯えているかのように、恐る恐るといった感じでゆっくりと扉が開いた。



開かれたそこから見えたのは、”予想通り”の涙目の怯えた表情。



そしてまるですべての行動に許可が必要とばかりに、扉の隙間から入ってきた一花は所在なさげに壁を背にしてこちらの様子をジッと伺っている。

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