第6話
「今、なんて、言った?」
「だからね、一花ちゃんを成人するまでの間、家で受け入れようと思っているのよ。」
結局、教室で燻っていた分の遅れを取り戻すかのように急いで帰った小心者の私は、濡れた制服を気にする暇もなく、呆然とリビングの入り口で立ちすくんでいた。
「
怪訝な様子のお母さんの声がどこか遠くに聞こえる。見慣れたリビングであるはずのそこは、見逃しようもない違いを受け入れ、まるで自分の家じゃないように感じていた。
「まったくびしょびしょじゃない。とりあえず着替えてきなさい。」
「あ、うん。」
お母さんに言われるまま、リビングに背を向けた。いつも私が座っているソファーに座り、こっちを見てくる存在を見ていなかったかのように。
帰りついた自宅のリビング。いつもはお母さんしかいないそこにはもう一人。
山田一花。私の幼馴染みであり、親友。
私の家の隣に両親と3人暮らしだった彼女は、先日両親を事故で亡くしたばかり。
悲しみに明け暮れたその真っ赤な目を腫らした彼女は、私がいつも座っているソファーの上でお母さんに出されたケーキを食べながらくつろいでいたらしい。
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