第4話

今日は朝から、嫌な予感がしていた。



目を閉じれば思い浮かぶ、見慣れた真っ白な大きな家。




都内、住宅街の一角にあるそれは、広い庭と車が3台入る車庫がついている。人が覗けないくらいの高い壁で覆われたそこの中心には、綺麗な真っ白な家があって、それに続く門扉に備え付けられた壁ポストの上には、アルファベットで一条いちじょうと書かれていた。



食品会社の社長をしている頼もしいお父さんと、いつも笑顔でご飯を作ってくれる専業主婦のお母さん。兄弟はいない。欲しいと思ったことはあるけれど、私を生んだとき、お母さんは子供が産めない体になってしまったのだと聞いた。



だけど私たちはそれを不幸だとは思わず、家族3人支え合って生きてきた。




ね、私は不幸じゃない。



ちゃんとした家があって、両親に愛されて、食事もきちんとできて、学校にも通わせてもらっている。



なんの不満もないその生活の中で私は幸せに生きてきた。

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