第3話

その理由ははっきりとは言えない。



ただの思春期の憂鬱な気分のせいかもしれないし、口煩い親に少しでも会いたくないという身勝手な言い分のせいかもしれない。




ーーーそれとも、この間あの子に起こった不幸のせいかも、しれない。




「ふう。」



だけど、憂鬱な気分のままでも家に帰らないわけにはいかなくて。それは悲しいかな、高校2年生という立場が自分に強制してくる。



もう梅雨が終わるはずの7月中旬、梅雨の最後の涙とばかりに降った豪雨は、まるで私を足止めしようとするかのように降り続けている。



バカみたい。そんなのは無理なのに。親切な豪雨にさえ、私は心の中で悪態をついてしまう。



なんて性格が悪いのだろう。この豪雨は私の今日の気分を肯定してくれるために降っているのかもしれないのに。


例え鞄の中に折り畳み傘を持っていたとしても、それをなかったことにしてしばらく雨宿りしてもいいって、甘やかしてくれているのかもしれないのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る