第53話
「ふふっ、イーサン様と2人、平民のように寄り添って買っていただいたこのブレスレットの方がどんな宝石よりも価値がありますわ。」
「まぁ、エラ様ったら。あのグレイ卿と純愛を楽しんでいらっしゃるんですね。素敵ですわ。」
「本当に。いつも厳めしい顔しかお見せしなかったグレイ卿が最近は表情が和らいでいらっしゃると、父も申しておりましたのよ。」
「エラ様の愛がそうさせたのですね。」
「そ、そんなっ。愛だなんて!」
頬に手を添えイヤンイヤンと恥じらうエラは、その美貌を最大限に使い、聞こえているはずの口撃を一切無視して近くの令嬢たちにノロけている。あれだけ声高々に悪口を言った面々は視線すら寄こさないエラにムッとし、あからさまに顔に嫌悪感を表した。
「物の価値は人それぞれですわ。私は値段でしか測れない贅沢も好きですけれど、こうして心を込めた物をアクセントとして一緒に使うのも好んでいますの。だってそちらのグライン伯爵令嬢様のドレスはあの大公家から嫁いだとされるおばあ様の代から受け継がれている由緒あるドレスでしょう?そちらのエリス侯爵家令嬢様の扇子も先々代の王妃様から賜った年代物と聞いておりますわ。」
「まぁ、このドレスの価値がお分かりになりますの?さすがグランヴィル公爵令嬢様ですわ!」
「そうなんですの!こちらの扇子は母から婚約のお祝いとしていただいたばかりで。今日初めて使う機会に恵まれたのですわ。」
嬉しそうに目を輝かせる令嬢たちに笑顔で頷き、自分を囲む令嬢1人1人にエラは笑みを向けた。
「そちらのラフィリス伯爵令嬢様も私のようなブレスレットをしておりますね。この間ご婚約者様からいただいたものと言っておりましたでしょう?そちらのマカミー子爵令嬢様も。最近は婚約者様に心の籠った一品を送っていただくのがブームとなっていますものね。」
驚いたことに、エラは彼女たちの身に着けている装飾品やドレス、彼女たちの会話などから必ずエピソードを名指しで語り、彼女たちを喜ばせた。特に低位貴族である伯爵以下の娘たちはポーッとしたようにエラを見つめ、あの有名なエラ・グランヴィルが自分を覚えてくれていることに舞い上がっている。
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