第43話
「申し訳ないのですけれど…。」
ゾフィアが振りかぶった手を止めたのは、王都随一の職人が自ら手掛けた一点ものの扇子。彼女の髪の色に合わせた銀細工、目の色であるエメラルドグリーンの糸で編み込ませたそれはもはや芸術品ではあるが、銀を使っているせいか普通の扇子よりも”少々”重い。
「イーサン様に”触れないで”いただけます?」
いつの間にか近くまで身を寄せていただけでなく、その扇子で軽々とゾフィアの手を受け止めたエラは、イーサンが止めに入る前提でそう言い放った。しかし笑顔は崩さぬままではあるが、それは今まで見たことがないほどの迫力があり、彼女の背後になぜか見える青い炎を前にゾフィアは思わず悲鳴を挙げる。
「そっ、そんな男にわたくしが触れるわけないでしょ!」
しかしそこはゾフィア。空よりも高いプライドがなんとか自身を押しとどめ、エラの扇子を振り払いながら吐き捨てる。そんな彼女の言い草にエラはコテンと首を傾げた。
「あら、わたくしは触りたいですけれど。」
「なっ。」
彼女の爆弾発言に誰よりもびっくりしたのはイーサンだ。絶句するゾフィアをよそに顔を真っ赤にしてパクパク口を閉じたり開いたりしている。
「ふふっ、冗談ですわ。イーサン様。」
「あ、ああ、そ、そうなのか。」
そう言うエラになぜかめちゃくちゃがっかりしているイーサン。肯定してほしいのか否定してほしいのかどっちなんだと心の中で突っ込んだ見物人は多い。
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