第42話
忌々しそうにエラを見るゾフィアを前に、エラは淑女の笑みを崩すことなくイーサンを見上げた。
「イーサン様、次はどこへまいりましょうか?」
「はぁ?」
話しかけられたイーサンではなく、ゾフィアの淑女らしからぬ声がエラを咎める。もはや嫌悪感を隠すこともないその鋭い眼差しは視線だけでエラを殺してしまいそうなほどであり、いつの間にか彼女たちを囲うようにできていた見物人たちも震え上がるほどだ。
しかしエラはそんなゾフィアを丸っと無視して、少女のような可愛らしい笑顔でイーサンをまっすぐに見ている。その神々しさたるや。見物人たちの男性はもちろん、女性までもほう、とため息をつくほど魅了される中、直視されているイーサンは顔を真っ赤にして固まっている。その様子は視線を外せば死だとばかりに動くことを禁じられているようにみえ、ゾフィアに敵対されているエラよりもよほど切羽詰まって見えた。
「このわたくしを無視するなど!」
そこへ、遂に怒りが頂点に達したゾフィアが手を振り上げる。皇太子の婚約者候補筆頭という自負と、エラへの敵対心が馬鹿にされたことで限界に達したことで起こした悲劇、となるはずだった。
「っっ、ヒッ。」
ここで、助けに入るのなら、もちろんヒーローであるイーサンだろう。騎士団長であり、殺戮兵器という異名を持つ彼が素早くエラをかばい、ゾフィアの手を止め、勇敢に立ち向かう。それを期待していた者はとても多かっただろう。しかしそうはならなかった。
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