第36話

王もグランヴィル公爵も、イーサンの様子にため息をつくしかなかった。



なんせ2人とも、考え方が違うにしてもイーサンとエラの縁談がなかったことになればと望んでいたのだから当然だ。



自分の息子たちと結婚させたい王。目に入れても痛くないほど可愛がっている娘を噂とはいえ悪い印象を持つイーサンと結婚させたくない公爵。この2人はそれを期待していたというのにどうだ。



『これは、どうにもできない。』



絶世の美女エラ・グランヴィルを前に手も足も出ない”ただの純粋男”を前に、少なくとも彼からこの縁談を断るはずはないと確信した。そしてそれ以上に、エラの”頑固さ”は分かり切っている。だから王も公爵も、白目で放心するしか手がなかったのだ。




案の定、イーサンは簡単にエラの前でひれ伏した。人から嫌われ生きてきた男が突然無条件に好意を伝えてくる美女に手を差し伸べられたのだ。手を取らないという選択肢はなかった。



結局、エラの願いで婚約式は2週間後に盛大に行われ、エラとイーサンは晴れて婚約者同士となった。



そして、イーサンの公務の合間を縫ってこうしてデートを重ねているというわけだ。

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