第28話
「貴女はなぜ、私と結婚したいと思ったのですか?」
シンプルな質問だ。しかしきっと、エラ以外の全員がそう思っていたことだろう。それを表すように、思わず王と公爵、ベラが小さく頷いた。
質問されたエラは一瞬目を見開いたが、キョトンとした顔をバラ色の笑顔に染めて口を開いた。
「それはわたくしが、グレイ卿をお慕いしているから、ですわ。」
「なっ。」
その言葉に王と公爵が目を見開き、ベラが呆れのため息を吐く。表情変えず待機しているスカイラーとは違いシャルズだけが信じられないとばかりに声を発した。
「ゴホンッ。失礼しました。」
シャルズの言葉に、それは仕方がないな、そう心の中で妙に共感してしまった王は、イーサンをへと視線を移す。彼は先ほどよりも険しい表情で眉間に深い皺を作り、エラを一心に見つめている。誰もがイーサンの不機嫌さ、もはや殺気に近いそれに息を呑み様子を見守っているというのに、それに気付いていないかのようにエラは続ける。
「初めてお見掛けしたのは鍛錬場ででございました。部下たちの鍛錬の相手をされていた貴方様はそれはそれは素敵でしたわ。恐らくそれは、一目ぼれというものなのでしょうね。あの日以来わたくしの頭の中はイーサン様でいっぱい。あ、お名前でお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「…はぁ。」
「ありがとうございます。それで、それ以来イーサン様のことを周りに聞いてみたり、会えることを祈って廊下を行ったり来たりしてみたのですけれど。結局廊下では一目すら会えないどころか噂話を聞くにつれこう、愛おしさが増してしまって。そんな時思いつきましたの。もしよろしければわたくしに、イーサン様のお傍で一生お支えする栄華をいただけないかな、と。」
ポ、音が聞こえそうなほど綺麗に頬を染めたエラの独白に、間違いなく室内のほぼ全員が白目で放心した。通常運転なのはベラとスカイラーのみである。
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