第22話

中に入れば、近衛兵が2人、すでにいた。ただでさえ重そうな甲冑に何個もの勲章を付けている金髪の男。そしてその補佐をしているのであろう、外の近衛兵たちと同じ甲冑姿の眼鏡を付けたクリーム色の髪の男が話しこんでいたところで顔を上げる。すぐさま天幕の入り口あたりにベラとスカイラーが並んで立った。



勲章男はイーサンが中へ入ってきた途端、視線を鋭く尖らせたが、その後で入ってきたエラを見つけるといかにも女性受けしそうな甘い笑みを浮かべ、足早に歩み寄ってきた。



「エラ嬢、久しいな。元気にしていたか?」


「…シャルズ卿。この間の夜会依頼ですわね。」


「覚えていてくれたのか。」



顔を綻ばせたシャルズは差し出されたエラの手の甲へキスを落とす。そしてその姿勢のまま、視線だけをイーサンへと向け、得意げな顔をする。それを見下ろすイーサンは興味がないとばかりに一切表情を崩すことなく、見つめているだけだ。



ピキリと血管を浮かせたシャルズは面白くないとばかりに不機嫌そうに顔を歪め、エラの手を名残惜しそうに放すと口を開いた。



「それにしても今回は王命とはいえ迷惑なことになったね。」


「え?」



さも気の毒だと言わんばかりのシャルズの言葉に、エラは首を傾げる。彼女の不思議そうな様子にシャルズも首を傾げた。



「このお見合いは王命で仕方なくだろう?しかし大丈夫。エラ嬢はこの国の宝のようなもの。断ることもできるだろう。なんなら、私が動いてやってもよい。」



まるで代償を強請るような傲慢な言い方に、エラは笑顔で首を傾げたまま。しかし数秒ののちようやくシャルズの突然の話を飲み込んだのか口を開いた。

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