第7話
『きっと、お嬢様も王子様がたを見れば考えを改めるわ。』
楽しそうに笑っているエラを見て、ベラも頬を緩ませそう思う。彼女は確信していた。エラに相応しい運命の相手は、王宮にいる、と。
それはある意味正解であり、エラの予感もまた、正解なのだ。
運命は、今まさにエラに微笑もうとしている。その結果、とんでもない混乱が王都を駆け巡るのだが、幸せに愛されたエラには、関係のない話だ。
「お父様、急な伺いにも対応していただき、ありがとう存じます。」
「ああ、他ならぬお前のためだ。仕事などどうでもいい。それで、話があるらしいな?」
「はい。」
娘の可愛らしい笑顔に、マシューの頬が緩む。王宮ではいつ足元を掬われるやしれない中大臣職を務めているマシューは、厳格で冷たい人間だと周りに揶揄されるほどの男だ。そんな彼が笑うのは、家族、特に娘のことのみ。これだけ可愛い娘であればそれもしょうがないと、周りは納得している。ゆるゆるに緩んだマシューの顔を見て、ベラも内心クスリと笑う。もちろん、侍女の鏡である彼女は顔に出すことはしない。
「王家からの縁談の申し込みについてですが。」
「ああ、王家は3人の王子に均等に権利を与えたいらしい。1人1人に会い、エマの気に入った方を。」
「お断りいたしますわ。」
「恐れ多くも、選んで、よい、と。今、なんと言った?」
普段冷静沈着なマシューの目が丸々と大きく見開かれる。そんな彼に、美しい笑顔のまま、エラはもう一度言う。
「王家との縁談、お断りいたします。」
それから約2分ほど、誰も口を開かず、部屋には静寂が広がっていたという。
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