王宮での出会い
第6話
さっそく彼女は、エラ・グランヴィルを象徴するエメラルド色のバラが描かれたレターセットに会いに行く旨を書き上げ、大急ぎで王宮で働く父の元へと届けさせた。最速で届いた手紙の返事が戻ってきたのは2時間後。エラはそれを運んだ者へベラを通してお礼の”お駄賃”を渡した。
「参りましょう。」
「は。」
エラはすぐさま馬車に乗り込んだ。続くのは公爵家の騎士3人とスカイラー、そして侍女のベラである。エラはその美しさと立場から悪い人間に狙われやすい。幼少期など何度も誘拐の危険にさらされたことがあるため、彼女の外出には常に3人の屈強な護衛騎士が着くのが常となっている。
そして、スカイラーと侍女のベラははじめから数には入れられていない。この2人はエラとセット。必ず一緒にいることが普通とされているのだ。
出発した豪華な公爵家の紋章入りの馬車の中で、エラはご機嫌ではしたなくも鼻歌まで歌っていた。
「ご機嫌でございますね、お嬢様。」
普段は無駄口を叩かないベラも、外出の雰囲気に乗せられたのか少々饒舌である。そんな彼女の問いかけに、エラは天使のような笑みで口を開いた。
「だって、もうすぐ休みが終われば帰る王都ですのに、素敵な出会いが待っている気がしますのよ。」
「さようでございますか。」
ベラは、この外出の目的が王子との縁談を断りに行くためだと知っている。しかし、エラが感じている【予感】は王子との出会いを予知しているのではないか、そう思えてならない。この国には3人の王子がいる。王太子のリアム、第二王子のソーマ、第三王子のエリック。3人とも聡明で容姿も良く、それぞれ20歳、18歳、17歳と適齢期にも関わらず婚約者がいない。彼らが今だ人生の伴侶を決めかねているのはエラの存在のせいであると、世間では周知の事実であった。
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