第3話

彼女には、毎日のように求婚の釣書きが届けられていた。



上は公爵家から下は騎士爵まで。王族以外の年頃の子息すべてから来ているのでは?と思ってしまうほどの多さに、彼女は一つ一つ自ら目を通し断りの返事を書き続けている。



そんな彼女に数日前、遂に王族からの婚約の打診が父によって届けられた。



この国では貴族同士の恋愛結婚が増えてきている。しかしそれでも、政略結婚の方がまだまだ多い。しかも、この国を統治する王族からの縁談となれば成立はほぼ確定となる。



エラは、恋愛結婚に憧れていた。自分が公爵家の人間であり、家督を継がない以上、将来的に家のために嫁がなければならない立場とは分かってはいても、だ。今、貴族の恋愛結婚が流行っているとはいえ、それは大体、男爵や子爵、一番上で伯爵位の者たちばかりであり、それも大体三男や二女など、家としても問題のない地位にいる者たちがほとんどである。



エラはこの国の公爵家の一人娘。それも、王族を除けばグランヴィル家が貴族の中で最高位に位置しているといっても良いほどの家格だ。そんな彼女が好きに縁談相手が選べるはずもなく、こうして王族からの打診が来てしまえば、もはや自由はないと言っていい。



しかも、エラは優秀である。淑女としての所作は完璧であり、容姿も10人中10人が振り向くと言われているというほど煌びやかで、文句のつけようもない。それに、彼女は領地を治めている兄の手伝いを学園に通う前から手伝っており、領地経営の面でも優秀だった。



そして、社交界の華と呼ばれる母を持つだけあり、社交の面でも優れ、6か国語を操りあらゆる国の来賓の相手もそつなくこなす完璧ぶり。



そんな彼女にこれまで王家からの縁談の申し込みがなかったのが不思議なほどだった。

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