第53話

「それで?相田は穂乃花を呼び出してどうしようとしてたんだ?」



僕の質問に、相田が肩を揺らして固まる。見つかった!みたいな罰の悪そうな顔が、ろくでもないことを企んでいたことを物語っていた。



「なんか、付き合ってる噂をほんとにしないかって言ってきて。」


「は?」


それは、また穂乃花を口説いていた、ということだろうか?



「知世くんと今すぐ別れろって言われてたところで知世くんが来てくれたの。」


「……。」


どうやら、松木のファインプレーでこれから話が盛り上がる前に駆けつけることができたらしい。ありがとう、松木と加奈子よ。今度ワックのポテトおごるわ。Sサイズな。



相田を見れば、フイ、と視線を逸らされる。彼氏のいないところで彼女口説いてましたって暴露されたら気まずいわな。



だけど、僕はその方法が気に食わない。



「相田。それはちょっと卑怯だと思わないか?」


「は?」



一歩前に出れば、相田が眉間にシワを寄せて睨みつけてくる。気弱になったり強く出てみたり、こいつはずっと中途半端だなと呆れてしまう。


でも今回ばかりは引くつもりはない。もう一歩前に出れば、それが意外だったのか相田がたじろいだ。



「お前さ、流石にだぞ。」


「なんだよ。やんのか?」



やんのか?って、どこのチンピラさんか。相田は話せば話すほど残念さが増す。普段は黙ってた方がいいと思う。

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