第52話

「いや十分強いから。」



穂乃花がビシリとツッコんでくるけど、相田の腕に手形を作ってしまったのは、少々ブーストがかかっていると、言いますか。



「それより、1人でついていったらだめだろ。」


「…ごめん。相田くん1人だと、思ってて。」



正直、焦りよりも今は怒りの方が大きい。相田はもちろん、壁でブツブツ言ってる3人も。そして、穂乃花にも。



「1人でも、だ。こんなとこで。なにされるか分からないだろ?」


「は?俺は穂乃花を襲うなんてしない!」


「噂流してた奴が説得力ないのは分かるよな?」


「そ、それは。」



腕を何度もさすりながら相田が俯く。大体卑怯なことしといて信用しろとばかりの態度がまた僕を苛つかせる。



「あのさ、流石に僕怒ってるんだけど。人の彼女をこんな人気のない場所に呼び出してなにする気だった?」


「は?」



僕の言葉に、相田が睨み上げてくる。さっきの怯えた感じはどこへ行ったのか。


「お前、穂乃花からOK貰ったからって調子乗んなよ?」


「いや、調子は乗るよ。穂乃花が彼女になったんだから。」


「…知世くん。」



僕の発言に、穂乃花がキャッと頬を赤らめていやんいやんしている。それはそれで可愛い。ほわんとした気持ちになっていると、相田が突然僕の胸ぐらを掴んで来た。もちろん、それは外させてもらうけど。



「クッ、馬鹿力め!」



いやいや、運動部のくせに部活入ってない僕に負けるなよと言いたい。言ったら逆上しそうだから言わないけど。

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