第51話

僕の視線を受け止めた穂乃花は小さく笑うと、にっこりと笑みを深める。


…え、どういうこと?混乱は深まった。



壁を向く3人はブツブツつぶやきながらうつむいていて、少々病的に見えてしまい不気味だ。



「私は、ほんとのことを言っただけだよ?」



首を傾げる穂乃花の笑顔が、何故か魔王に見える。どうやら、何らかの方法で魔王様があの3人を撃退したらしい。


「お前っ、なんなんだよ!」


「あ、ごめん。」



3人に同情かなにか分からない感情を持て余していると、相田の絞り出したようなか細い声にハッと気がついた。慌てて相田を見れば、どうやらなかなかの力で相田の腕を掴んでいたらしい。力を緩めればものすごい勢いで後ずさられた。



「お前っ、マジでなんなんだよ!」



怯えたような表情に思わず苦笑い。なんなんだよと聞かれればただの高校生ですがとしか答えられない。



「知世くん、なんか、強い?」


「ん?ああ、惰性で空手はしてたけど。」



母さんに強制されてダラダラ空手は続けていたけど、それでめちゃくちゃ強いとかではない。うちの道場には未来のオリンピック選手とかいるし。そんな奴らに先生がつきっきりで教えてて、僕達その他大勢は世間話しながら道場の端っこで空手の真似事をしているようなレベルだ。




だから、惰性。ダラダラとやめるきっかけも掴めずにゆるゆるやってる感じ。

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