第49話

うちの学校は作り的に人気がない中庭的な空間が何個かある。もちろん体育館裏は人気呼び出しスポット。あとは職員室そばの空き地と図書館そば。もちろん職員室そばの空き地に誰かを呼び出してなにかしらする馬鹿はいない。



あとは実験棟と呼ばれる実習室ばかりある建物の1階、科学室の横か。うちの学校に不良とかはいないからそこに呼び出すのはもっぱら告白目当てだけど。それも松木情報だからなんとも言えないところがある。



「はあっ、はっ、は。」



最短距離で全速力で向かったその場所は、先生が出現する確率が比較的低いことで、人気の場所。時々俗世から離れたい生徒たちが嬉々として集まり、弁当を食べる場所だったりする。



放課後のそこは、校舎反対側に木がたくさん生えているからか少し不気味だ。校舎の角を曲がり、履き替える暇もなかったシューズが泥をかぶって汚れるのを気にすることなく進めば、視界の先の穂乃花が俯かせていた顔を挙げて破顔した。



「あ、知世くん!」


「え?あ、うん?」




校舎の壁にもたれかかっていた穂乃花が目の前にいた相田を押しのけこちらに走って来ようとする。それを阻止するかのように相田が穂乃花の腕を掴んで、縋るような目を向ける。



途端に穂乃花の表情が強張る。それを見た瞬間には僕の体は自然と動いていた。

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