第44話
それにしても、聞き捨てならない。1歩前に出れば、2人がこちらを向く。直前まで睨み合っていたからかなかなかのお顔。穂乃花は魔王でも可愛いけどね。
「申し訳ないんだけど、愛咲を好きになるとか、ないわ。」
「はぁ?なに自惚れてんの?そういう意味で言ったんじゃないし!」
怒鳴る愛咲に首を傾げた。そういう意味じゃないってどういう意味だ?こいつはさっき僕が愛咲に自分の名前を呼ばれたくらいで好きになっちゃうしょぼい男的な悪口を言ったと思ったんだが。まぁ、いいか。
「別にそういうんじゃなくて、名前呼ばれたくらいじゃ不快にはなっても好きにはならないから。」
「ぶっ。」
「くはっ、辛辣!」
僕の言葉に背後で秋田が吹き出して松木がなにか言ってるが、今はそれどころじゃないんだよね。
名前呼ばれたくらいで僕が愛咲を?ないない。もし穂乃花と付き合ってなくて未だに彼女いない歴更新中でも愛咲は遠慮したい。
と、面と向かって言うのは流石にしないけど、僕に自惚れるなと言うけど正直愛咲こそ自惚れるなと言ってしまいそうになる。僕にだって好き嫌いはあるんだ。
「ふざ、ふざっ、っけんな、よ。」
「さすが知世くん!」
顔を真っ赤にする愛咲を押しのけ、穂乃花が僕に抱きついてくる。盛り上がる周り。僕の心臓は壊れそうだ。穂乃花が僕に抱きついたまま振り返った。僕から顔は見えないけど、愛咲の顔が赤から赤黒くなったから、魔王様が何らかのからかいをした模様。
「とりあえず、そういうことだから。二股とか気持ち悪いこと言ってないで、好きなら直接相田くんに言いなよ。じゃ。」
そして怒りからか絶句している愛咲を置いて、そんな捨て台詞を残して穂乃花は僕の手を引いて教室を出ていく。もちろんそれに従者のようについてきた秋田と松木が、購買に着いたあたりで教室に忘れてきた自分の昼めしを慌てて取りに行ったのは言うまでもない。
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