第43話
「二股とか変なこと言うのはやめろ。」
「っっ。なによ。陰キャでも男だもんね。か弱いお姫様は男に守って貰えなくちゃ反論もできないわけ?」
はじめから喧嘩腰なだけじゃなく、穂乃花を貶しにかかっている愛咲が本気でムカつく。休み時間の時もしつこかったけど、なんなのこいつ?
「愛咲。」
「陰キャがどうとか意味分からないけど、知世くんの言う通り二股とか変なこと言うのやめてくれる?私の彼氏は知世くんだけなんだけど。」
「はぁ?相田と付き合ってるくせにまだそんなこと言うわけ?」
僕が口を開いてすぐ、穂乃花が反論する。睨み合う2人を前にすれば、割って入れる雰囲気じゃなくて後退る。こういう時、男なんてなんの役にも立てないなと小さくため息をついた。
愛咲はクラスの女子の中でも派手な部類で、よくいる校則を守るつもりのない生徒の中の1人だ。ピアスにネイル、髪も明るく染めててスカートもウエストで折りまくってパンツ見えそうなくらいスカートが短い。
松木と同じく常に「だりー。」って言ってるし、よく生活指導の先生に怒られてる。月1回ある服装検査では毎回ペナルティーの漢字練習提出してるし、抜き打ち検査では当たり前に引っかかる。成績もいつも赤点取ったって馬鹿騒ぎしてるし、授業中は常にスマホをいじっててあまりにも酷いからこの間はスマホを没収されて親を呼び出されていたくらいだ。
正直、学校なんてめんどくさいし僕だって授業はあまり真面目に受けていない。松木も秋田も「だりー。」ばっかり言ってるし、試験期間中は早めに帰れるのをいいことにちょっと遊んでしまったりしている。だけど愛咲とかその辺の奴らを見てると、なんのために学校来てるんだ?って思う。まぁ、自分には縁のない部類の奴らだし、生活する上でなんの支障もない。それに、実は良い奴らかもしれないし、学校での態度が悪いからって悪人だと決めつけるのは良くない。バウもほら、あんな奴なのに甘えてきたら可愛いし。
そう思ってたんだけどな。
実際は勝手に穂乃花が二股してるって決めつけて喧嘩売って、何がしたいんだと戸惑いしかない。だけど穂乃花は訳の分からない理不尽にも冷静に対応しててすごい。
「相田くんのことはただの噂でしょ?私の彼氏は知世くんなんだから変な言いがかりはやめてよね。」
「なにそれ相田くーん。知世くーん。いい子ぶっちゃってー。」
「はぁ?知世くんを名前呼びするのやめてよね!」
「陰キャの名前呼んだところで何も思わないんですけどー!あ、陰キャくんが私を好きになっちゃうかもー?」
「はぁ?」
いや、冷静、だよな?冷静…。
「あらーそんなに睨んで。才色兼備な人気者のお姫様の仮面が剥がれちゃうー!」
「…殺す。」
おっと。愛咲の安い挑発に魔王が降臨なさったらしい。穂乃花って意外と子供っぽいとこあるもんな。
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