第42話

「ちょっと秋田さん、見ました?いやあねぇ新婚はっ。2人して赤面しちゃって!いやらしい!」


「そうですわね松木の奥さん!最近の若い子は全く!」


「うぜー。」



2人のからかいが流石にうざくなってきたが、僕が言えたのは情けなくも小さな「うぜー。」のみ。でも、目が合った穂乃花が顔は真っ赤だけど嬉しそうに笑うから。僕もつられて笑ってしまった。



「ねぇ、飯倉さん。ちょっといい?」



そんな雰囲気を壊したのはクラスの女子。名前は愛咲あいざき。今日1番僕にグイグイきてたクラスでも派手なグループとつるんでる奴だ。腕を組んで睨んでくるそれは明らかに敵意しか感じない。思わず穂乃花と愛咲の間に立つと、僕を見上げた愛咲は気に入らないとばかりに顔を顰めた。



「なにい?彼氏気取りの陰キャがいっちょ前に彼女を守ってるつもり?」


「は?」



イライラした様子の愛咲の喧嘩腰の言葉に思わずムッとする。それが顔に出ていたのか、愛咲は一瞬怯えを見せたけど、すぐに睨み上げてきた。いや、何この子。ギャルだとは思ってたけどチンピラな方なの?



「彼氏気取りじゃなくて彼氏なんですけど!」



突然、戸惑う僕の後ろから穂乃花が前に出てそう宣言する。ざわつく周り、目を見開く愛咲、赤面する僕。腰に手を当て、僕の前に立つ穂乃花の後ろ姿は惚れてしまうほどかっこいい。いや、惚れ直したやん。



「え、じゃあ、相田のことは二股、って、こと?」


「「はぁ?」」



穂乃花の彼氏宣言で誤解は解けて行くだろう。そんな楽観的なことを考えていた僕の耳に、愛咲の震え声が届いた。もちろんそのとんでもない発言に僕と穂乃花は揃って間抜けな声を出してしまう。当たり前だろ。こんなあからさまに二股するバカがどこにいるんだよ?



僕達を睨みつけてくる愛咲の剣幕に、穂乃花が後退る。両肩を支えて安心させようと肩をひと撫でした。

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