第41話

開けっ放しの教室のドアからひょっこり。天使の輪が出没する。様子を見ているとそれはゆっくりと室内を伺うように顔を出し見渡したところで、僕を発見。そして柔らかい天使の笑顔を見せた。



小さく手を振ってこっちこっち!と口パクで言ってるけど穂乃花。物凄く注目されてるぞ。



もちろん穂乃花の頭で光る天使の輪が出現した瞬間、教室中が気づいたんじゃないだろうか。大注目されているというのに、僕をまっすぐに見てこっそり来いとばかりに扉に隠れたまま必死でジェスチャーを繰り返す穂乃花。やはりいつも注目されている人はスルースキルが卓越してすごいんだろうか?



穂乃花が僕になにか訴えかけるたびに、クラスメイトたちは僕を見る。苦笑いを返すしかない僕を見てはまた穂乃花に視線を戻し、を繰り返し、それを重ねるたびに男子の目は殺気で血走っていく。



とりあえず僕の命のためにも急いで穂乃花のところに駆けつける。思いの外僕の勢いがすごかったのか、穂乃花が目を見開いてのけぞる。そして周りをキョロキョロして心配そうに僕を見上げた。いや、もう大注目されてるからね?



「どうした?」


「あ、うん。お昼、一緒に食べないかなって。」


「あー。」



僕は今物凄く感動している。これが世に言う。彼女と昼ごはん、か。



「じゃあ購買に寄ってから場所探す?」


「俺は加奈子読んでもいいでありますか?」



勝手に照れていたら、後ろから不穏な声が。振り返れば一緒に行くのが当たり前とばかりに秋田と松木が立っていた。



「いやいやいやいや、なに言ってんのお前ら!」


「えっ、もしかして彼女と2人っきりで行くつもりだったとか?うわっ、やらしー!」


「やらしー!」



松木のしたり顔に賛同する秋田。まじでぶん殴ろうかなこいつら。



「そ、そういうわけじゃ、ない。」


「動揺がやばい。やはり黒であります!」


「あります!」


「えー?」



松木の敬礼に秋田も倣う。困り顔の穂乃花が頬を赤く染めるもんだから、僕の顔まで熱くなってきた。

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