第39話

「今日はHR始まる前はどこにいたんでちゅかー?」


「チッ。乳繰り合いやがって!」


「…秋田。ちょっと古いぞお前。」



予鈴が鳴ってもうちのクラスの担任はまだ来ていなかった。正直助かった。予鈴が鳴ってから2分経ってたから最悪遅刻にされるところだったからな。



「なんか、相田が輩で。」


「は?」


「はいお前らー。先生が遅く着きまして寂しかったのは分かるけど席につけー。」


「チッ。後でゆっくり聞かせてもらうから。」



僕の”相田が輩”という自分でも訳の分からない説明に松木が間抜け顔を晒し、さっきから少々平成初期を意識している秋田がつばを吐く真似をしながら席に戻っていく。もしや秋田は僕の輩というワードにのってきたのでは?相変わらず意外とお調子者な秋田を見ていたら僕の腹の中に溜まっているモヤモヤが少しだけ解消した気がした。…お便秘のことではない。




担任の全然面白くないHRを聞きながら、さっきの相田のことを思い出した。



…明らか目をつけられてんじゃないか。それも初日からよ?いや、覚悟はしてました。してましたけどね?反応早いなー!




相田の僕を憎むような目。正直気分が悪い。人って普通に生きてりゃあんなにも強烈に睨まれることなんてあるわけないわけで。それに相田の僕を蔑むような態度。さっきあの場所には10分くらいしかいなかったはずだが、人生いっぱい分の負の感情をぶつけられた気がする。




そりゃ正直、自分の彼女だって言いふらして回ったのに次の日にそれを否定するように彼氏と登校されたら恥ずかしいだろうけど。でも旦那の不倫相手を責めて旦那を責めない嫁、みたいなスタンスでこちらにこられるとどうしていいか分からなくなってしまう。

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