第37話

「昨日は、ごめんね?」


「いや、僕こそごめん。」



守れなくて。それはちょっと恥ずかしくて言えなかった。だけど意味を汲んでくれたのか、穂乃花が小さく首を横に振る。



「なんかはじめ変な感じになっちゃったけど、改めてこれからよろしくね?」


「ん。」



微笑む穂乃花に小さく頷くと、穂乃花は嬉しそうに笑って僕の肩に頭をコンとぶつけた。


それだけでざわつく周り。学校に向かう道の途中、もちろん同じ方向に向かう生徒ばかりなわけで。そんな彼らは僕達を遠巻きにしながら様子を伺い、歩調も僕らに合わせて歩いているようだ。


さすが穂乃花というか。注目のされ方が半端じゃない。そう思うとなんだか笑えてきて。



「ふはっ。」


「え?どうしたの?」



笑い出した僕を穂乃花がまん丸になった目で見てくる。それもまた笑えてきて、周りの視線なんかどうでもよくなってしまった。




と、思ったのは一瞬でした。



「なぁ、俺の話聞いてる?」


「…はぁ。」



学校に登校して穂乃花を教室まで送っていったあと、突然腕を引かれて屋上近くの踊り場まで連れてこられた。僕は壁際に追い詰められ、真横には男の腕が。


なぜ僕は今サッカー部エースの相田に壁ドンされているんだろうか?そう思いながら目を合わせれば、相田がやや上から僕を睨み下ろしている。




「なんの話ですっけ?」


とりあえずタメ口やめないかな。同級生だけど話したことないんだけど。なんて軽く反抗的な気持ちが芽生える僕を更に凶悪な目で睨みつけて、相田は口を開いた。


「だから、穂乃花と付き合ってるってホントかよ?」


「…本当、ですけど。」



とりあえず相田が穂乃花を名前呼びしているのが気になってしょうがないなか、なんとか言葉を吐き出す。高圧的な相田の態度は軟化することはなく、むしろ僕の返答が更に彼を怒らせてしまったらしい。ギリリと歯ぎしりする様子から、今にも殴りかかってきそうだ。

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