第36話

僕と穂乃花の家は真反対で、待ち合わせしようにも登校時間がちょっと違うからと朝は一緒に行かない話がついていた。付き合いたてにしては少々ドライな気もしたが、朝登校が超早い穂乃花の毎日の習慣を鑑みて、『まぁ、無理に合わせても将来ボロが出るしな!』と気にしていない風を装って承諾したのはつい2日前だ。



穂乃花は朝図書室で勉強をするか読書を1時間してから教室に向かうらしい。無理だ。無理。僕は朝起きるのが物凄く苦手だ。妹からダイビングアタック食らってやっと起きるか起きないくらいだ。昨日は特別。ほぼ寝てないから寝てないようなもんだったし。正直夢見ながら一晩中浮かれていたからか朝はスッキリ目が覚めて家族全員にびっくりされたくらいだ。


そんな僕が1時間早く登校?はじめの1週間くらいはイケるかもしれないが、それも”かも”な話。正直無理なのは目に見えている。



そんな僕に、穂乃花が合わせてくれるようになった。とりあえず僕達の関係が広まるまでは駅前の早朝から開いている喫茶店で勉強して、駅で僕と待ち合わせして一緒に行くことに。それだと毎日お金を使わせてしまうから僕がなんとか30分前までに駅に行くと言ったら素敵な笑顔で無理はしないでと言われた。それに、30分なら正直やれることも限られるため意味ないとも。ごもっともでございます。



うなだれる僕に、『そんな知世くんだから好きなんだよ。』と笑顔で言われたら僕はなにも言えなくなってしまって。結局彼女の好意に甘えて今日、待ち合わせ初日。



「お待たせ!」


「ん。はよ。」


「おはよー。」



学校近くの最寄り駅。もちろんそこから排出される生徒はうちの学校の奴らばかり。しかも、絶妙な時間帯なおかげで人数も多い。そんな奴らの視線を一心に受ける我が彼女は、嬉しそうに手を差し出してくる。


あードキドキする。壊れそうな心臓を心配しながら手を差し出せば、穂乃花は嬉しそうに僕の指に自分のを絡める。



ザワリ…。その瞬間、周りが沸く。


ヒソヒソ、ザワザワ。不躾な視線を受けながら、僕と穂乃花は歩きだした。

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