第35話

まぁこの子なら全然子供の頃からモテただろうし、彼氏なんて腐るほどいてもそこは違和感がない。いや、別にこの子がその辺だらしないとは思っていないけど、僕は彼女が初めての彼女なだけに経験値の差に敗北感を覚えてしまうのは仕方のないことだと思う。



だからこそ、少々スローな進みを希望したいわけで。要するに急な距離の詰め方は戸惑ってしまうのだ。



それに、目下の問題は僕と穂乃花の付き合い方じゃない。いや、それも重要なんだけど、相田の行動がキモすぎてどうしようってことだ。



「穂乃花の話を聞く限り、相田はフラれても諦めてないってことか。」



僕のつぶやきに隣の穂乃花が何度もうなずく。そして不意に、怯えたように目を伏せた。


「正直、グイグイさが怖いっていうか。」


「そりゃそうだよな。なんか外堀を埋めていくようなやり方がキモいし。」


「…松木。」



眉間にシワを寄せる松木の言い方を僕が咎めると、心外だとばかりに松木が僕を睨んだ。



「久住もあいつの擁護してる場合じゃないんじゃねーの?これ結構、大事おおごとだと思うけど。」


「いや別に、擁護してるわけじゃない、んだけど。」



正直、まだ全てが確定ってわけじゃない。今のところ振られた相田が穂乃花を諦めきれなくてわざと噂を流して噂を現実にしようとしているって感じだけど、それは周りの噂と穂乃花の証言、そして相田の言動を穂乃花伝手に聞いた予想に過ぎないから。



「実際そうだったら気持ち悪いけど、それよりもまず噂をどう打ち消すかを考えた方が生産的だと思う。」



もし誤解だったら穂乃花も巻き込んで面倒なことになる。そう思って言ったその発言がフラグになるとは知らず、とりあえず僕と穂乃花が普通に過ごしていればいずれ噂は消えるだろうという結論になってその日はみんなで松木にワックのポテトを奢ってもらって帰った。松木のおごりな上穂乃花にあ~んしてもらったポテトは最高級の味がしたのは言うまでもない。

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