第34話
どうやら相田が穂乃花と付き合っていると宣言したのは本当のことらしい。そうとしか取れない相田の行動が穂乃花からは見てとれたらしく、僕達3人は学校一のモテ男の行動にドン引き通り越して気持ち悪さを覚えてしまっている。
「こんな噂が広まってるんだって。とか言ってニヤニヤしてるの。それを現実にするためにも一緒に帰らないかって言われて。」
「…ごめん。」
「あ、ううん!これは知世くんのせいじゃないし気にしないで。ちゃんと断ってこうやって追いつけたし!」
「だけど…ごめん。」
とにかく謝るしかない。嫉妬で周りが見えてなかった僕は穂乃花が危険な目に遭っていたというのにそれに気づかずに無視してしまった。俯くと下から穂乃花が覗き込んでくる。フワリと香った甘い匂いと満面の笑み。あれ、なんで笑って…。
「穂乃花?」
「ふふっ。嬉しい。彼氏に守られる彼女って感じで!」
とりあえず話をと移動していた近くの小さな公園。ベンチの上に座る僕に穂乃花がわざわざ隣から降りて腹のところに抱きついてくる。
「ふふっ。知世くーん。」
「…穂乃花。」
「俺達はなにを見せられてんの?」
「…屈辱だ。」
僕達にベンチを譲ってくれた我が友たちは正面の地面に座った状態。松木は白目を向き秋田は悔しそうにがっくりと項垂れる。流石に彼女が腹に抱きついた状態でこいつらにドヤ顔できるはずもなく、温暖化が進みそうなほど上がった顔面温度を冷やそうと穂乃花をそっと引き剥がす。
「とりあえず大人しく座ろうね?」
「えー。」
不満そうな穂乃花が可愛い。というか、今のところ穂乃花の言動に困惑しっぱなしだ。
どちらかといえば飯倉穂乃花といえば可愛い系というよりクール清楚系と思われていた。友達といる時も天真爛漫に笑うというよりクールな笑顔なことが多く、会話するのも落ち着いていてまさに淑女といった感じ。
彼女のそばにいた男子生徒が聞き耳を立てて聞いていたところ、友達に対しては時々ドSとも取れる鋭いツッコミを発揮するらしい。かといってそれが性格のキツさに反映されるわけではなく、あくまでも彼女は性格が良い上時々鞭をくれるとド変態男たちにはテンション上がる要素として扱われていた。
だけど実際見ればどうだ。可愛い。やたら可愛い。そしてたまに清楚なクール女子も顔を出し、なんと魔王もそこそこ手を上げる。それになんだろう。彼女から醸し出される”デレ”の濃度が大変濃いのだ。
確かに僕達は付き合っている間柄だが、初っ端からここまで飛ばされると恋愛初心者な僕じゃ対応が難しい。
もしかして、これまでに付き合ったことある奴のせいか?と余計な勘繰りで胸が傷んでしまう。
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