第33話

午前中は、僕に向けてメッセージを送っては既読にならないのを不思議に思って過ごしていた、と。



うん、ごめん。充電逝ってました。



そして僕が穂乃花と相田が廊下を歩いているのを目撃した時。あの時はどうやら、相田に数学の先生から頼まれたものがよく分からないからついてきてほしいと言われたんだそうだ。穂乃花は自分のクラスの数学の授業で使う教材を先生の補助として用意する月間の係らしく、隣のクラスの相田もそうだと言うから教えて上げるためについていった。


そこで幸か不幸か、穂乃花は現実に気づいた。



2人で廊下を歩いている内、やたら見られるし視線も生暖かい。なんだろう?と思ってたら、相田が何故か照れながら自分たちが付き合っているという噂が広まったと知った。



そこで慌てた穂乃花は、僕からメッセージの返信がない理由が実はこの噂のことじゃないかと誤解した。すぐに教室に会いに行こうとしたけど、廊下を2人で歩いたせいか休み時間のたびに友達に引き止められ、ありもしない”相田との馴れ初め”を質問攻めにされたそうだ。



そして放課後。校門で僕を待っていた穂乃花。出てきた僕に話しかけようとしたところで相田が何故か『お待たせ!』と言ってきた、と。



本人はなんちゃって、なんて冗談みたいに言っていたけど、それを聞いた僕が穂乃花に話しかけもせずに行ってしまったのを見て更に誤解を重ねた、と。いや、誤解じゃないか。正直イライラしてそんな態度を取った僕が悪い。


今になってみればモヤモヤの正体もイライラの正体も分かりやすいほど分かる。



要するに僕は嫉妬したんだ。それに、穂乃花に歩み寄りもしないという小ささも披露するという情けなさぶり。そこは後で謝ろうと思う。本来なら噂を声高に否定して、穂乃花の男は僕だ!くらい言わなくちゃいけないんだから。



それにしても。僕も松木も秋田も、もちろん穂乃花もなんとも言えない表情になってしまっているのは、この状況でもまだ穂乃花を諦めていないらしい相田のせいだ。

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